暮らしと住まい

2013年9月15日 (日)

平塚らいてうの「貸家プラン」エスキース

130915raiteu_plan 1919(大正8)年8月、平塚らいてうは名古屋での「婦人講習会」で講師を務め、その関連で繊維工場など11ヶ所の女工労働の環境を視察しています。帰京後、突然のように「貸家事業計画」を企画し、8月20日資金調達、借金支援の申し出をしたようです。その申し出企画は、しっかりしたものです。自宅敷地は150坪余あり、南側が大きくひらけて眺望も良い空地があり、ここに2軒の貸家を建てる。建築費は坪当たり70円、2軒の建築費2,800円、井戸1ヶ所、門2ヶ所、垣根、庭などで500円、総費用3,300円を借用したい。家賃は年に720円(月額60円)、地代、保険料、家屋税が年に180円(月額15円)、残金540円を返済金に充てる。初年度は利息が231円、返済金が309円だが、元金の減少で利息が減っていくので、大正16年で完済できるとする9年間の返済明細書がついています。らいてうの計画では9年後からの家賃収入月額50円ほどが、5歳と3歳の子供の教育費に使えればありがたいとの心づもりであったようです。このエスキース、大工さんと相談しながら仕上げたのかもしれませんが、当時の標準設計をよく示していて、貴重なドラフトです。

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 申し出先は、彼女の信頼する支援者梅田きよ(二宮町居住,梅田潔氏夫人)でしたが、諸事情があったのか借金はかなわなかったようですが、他の手法で事業実現させています。左の画像はその手紙ですが、解読は町田寿郎氏(二松学舎大学)のものを折井美耶子氏が再解読されて、レポートされています。研究者とはたいしたものですね。これが読めるのですね。
 2軒の貸家は出来ましたが、「新婦人協会」の事務所に使われたり、市川房枝氏などが住んだこともあったようです。
130915rauteu_report  この記事は、すべて「平塚らいてうの会紀要第6号」に記載の折井美耶子氏「平塚らいてうの新婦人協会構想と市川房枝」(P24~43)によって紹介するものです。この号には、らいてうのお孫さん奥村直さんの特別寄稿,米田佐代子氏の「戦後の女性運動における平塚らいてうと市川房枝-資料解説を中心に」も掲載されています。

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2013年8月22日 (木)

被災時の応急バラック!!!

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 今朝の東京新聞の記事です。この記事で、自らの住居体験が急に蘇ってきました。「バラック」、元来は兵舎の呼称のようですが、敗戦後は「バラック住まい」と言う日本語が敷衍していました。朝鮮京城府から佐賀県武雄市に逃げ帰って2年4ヶ月の緊急滞在から、埼玉県入間川町を経て東京渋谷区に転居しました。宿無しの一家でしたが,親族所有の大型家屋(初台)に転がり込んで8カ月、新制代々木中学に通いました。

 1949年3月、苦難の末に取得したのがこのバラック(幡ヶ谷)でした。焼け残り木材と焼けトタンでできた家です。でも、大工さんが作ったのでしょう、かなりきちんとした6畳ふた間の家でした。敷地は100坪ほどあり、立派な畑がついていました。ここに1年半ほど住み着いて、住宅金融公庫の被災者融資で、畑のところに、20坪以内と言う融資制限いっぱいの平屋(4間×5間)の家を造りました。新制高校1年生、私の第1号設計です。かなり知恵を絞った合理的な設計といまだに自負しています。この結果が私を「建築」の世界に引き込んだようです。(この家は増築を重ねましたが現存しています)

 大学3年のとき、残っていたバラックと新家屋の間に、私の「設計室」を、ほぼDIYで作りました。2,400mmの立方体と言うコルビュジェばりの「最小限建築」でしたが、名建築?でした。(現存しません)

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 東日本の大被災後、鋼製プレハブの仮設住宅が,荒っぽく建てられましたが、その居住性のあまりの悪さ、供給の遅延などから、地域独自の「木造仮設住宅(3間×3間)」が整備され始めました。画像はその一つ、岩手県住田町のコンペで選ばれた「最小限住居」です。この平面計画、田の字型というのでしょうか、極めて簡明なものです。わが第1号設計の姿(少し大きいですが)を思い出させました。木造応急住宅としての日本的解決の手法は同じだったと感じ入りました。(取り留めない懐古記事でご無礼します)

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2013年4月 3日 (水)

公営住宅の供給は福祉国家の最低条件

130403akahata 今日の報道です。このような記事には、胸が詰まる思いがします。住宅を個人の甲斐性に任せる、欲しけりゃ借金して買え、というのはあまりに惨い。すべてのひとが自己所有住宅を持ち得るほど所得力が高いとは思えません。賃貸公営住宅こそ affordable であることを可能とします。

 特にこの災害大国においては、被災弱者、家族も財産も失った人びとのための災害公営住宅は、待ったなしで子に・公共の責任です。記事によると完成した入居が始まったのは、市町村営の住宅のようですが、県営あるいは県公社の供給はどうなっているのでしょうか。暮らしの基盤は住宅です。公営住宅の供給拡大こそ、被災時対応に備えるものと言えます。
 公営住宅供給は、国、都道府県、市町村とも縮小し続けています。戦後68年、住宅貧乏は国家公共の最大の恥です。経済大国をささえる住宅貧乏は、工業拡大を支える原発災害と同じようです。homeless people の大量生産からは、一日も早く早く脱出しなければなりません。

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2013年3月15日 (金)

住まいは人権

130315jutakukaigi87_2 日本住宅会議は1982年に設立され、それからすでに30年以上の時が流れています。この会の世代交代も進み、画像のイラストを残されている西山夘三さん(1994年没)など多くの方が他界されていますが、設立の中心、事務局長として奮闘された早川和夫さんは、いまだ鋭い発言を続けられています。

 会誌今月号の巻頭言に、久しぶりの寄稿をされていますので、転記する手間を惜しんでスキャンした画像ですがご一読ください。いまは、この会には顧問として残られていますが、この文脈から現役世代への「初心」を忘れるなという熱い思いの檄が読み取れます。
130315ohkohchi 1945年の敗戦は、この国の庶民層の「住宅事情」を徹底的に破壊し、住まい文化そのものを喪失させたのです。「住宅貧乏」は、高度成長やら石油ショックやらバブルやらリーマンショックやら、経済変動のつど揺さぶられ、3.11の大被災では、いまだに30万人を超える方が住まいを失ったままです。近代国家、経済大国の欺瞞が、「住まいと暮らし」に張り付いています。住まいのために借金漬けの人生を送る、二重ローンなどと言う悲嘆に泣かされる。新築入居後1週間で全破壊という悲劇。自国民の住生活を保障し得ない国家が、連綿とその国体を維持していること、許しがたい思いです。
 私のホームページは20年以上「Open your eyes for your home!」と叫んでいますが、「住宅貧乏」は生き続けています。日本住宅公団は、巨大デベロッパーに変身して「公的住居供給」などは捨て去られています。
 「住まい」は暮らしのすべて、福祉の基底です。大河内一男さん(1984没)の『我われは人間らしい生活を求める権利を有す。住居はその基本的要件である』というアピール文を読み取ってください。(今号の「住宅会議30周年特別寄稿」は貴重なものです。コピーをお届けできます)

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2013年2月25日 (月)

住宅・建築物の省エネ改修と耐震対策促進

130225eco_taishin_2 国交省は2月20日、平成24年度補正予算による支援事業の説明会を開催し、当日配布の資料を公開しました。それによると補正予算は「省エネ改修支援」50億円として、成立日から14日後の応募締め切りと言う慌ただしさです(扱いは独法建築研究所)。平成25年度もこの支援事業は継続し、当初予算は171億円を組んでいるようです。
 また平成25年度には「耐震対策緊急促進事業」が創設され、当初予算には100億円の枠がとってあるようです。これは緊急輸送道路沿道や密集市街地、津波浸水区域等の避難路沿道の住宅・共同住宅に対しては事業費の3分の2を国と地方自治体で負担(その他は23%)するとしています。安倍政権の景気対策でもありますが、予算規模はこれで適正なのでしょうか。

130225town_shinsei_2_3  マンションは、区分所有法というやや不安定な法の下に存在していますが、この国の都市整備にとっては大きな存在です。所有が区分され共有部分もあるという資産ですから、その管理や修繕、処分などの合意が欠かせません。この画像は本年初頭から地域紙で報道された高層マンションの所有権の移動ですが、管理上良い方向に向かっているようにも思えます。
 特に、耐震性能の改善についてはすべてのマンションが直面している課題ですが、地域防災計画で定められている「緊急輸送道路」沿道の高層建物、この新幹線ビルのように鉄道沿線の建物は、その安全性は被災都市の緊急対応に決定的な影響を持ちます。
 それぞれのマンションの区分所有者、居住者が、共同体としての施設管理を向上させることが第一ではありますが、マンション管理への行政側からの支援、関与は避けられないものになっています。管理不十分のまま老朽化していくマンションの存在を、基礎自治体は放置したままにすることはできなくなります。早期の積極的な施策が望まれます。

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2013年1月15日 (火)

住まいは人権

130115tokyo_4  こういう記事に接すると、本当に悲しくなる。この国の住宅貧困は一体いつまで続くのだろうか。敗戦後の悲惨な住宅事情は、この国の人びとから「住まいの思想」を奪い去ってしまった。あの無住居の住民たちを差し置いて「重化学工業再興」「傾斜生産」とやらで、暮し住まいは国の政策から転げ落ちてしまった。「所得倍増」「住宅金融」とかで、住まいは自己責任、個々の甲斐性に押し付けられた。

 住宅無策の中で、公営住宅は当然のように消え去りつつある。住宅公団やら供給公社やら、なにがしかの役割を押し付けられていた「公共事業体」は、2転3転鮮やかに変貌してしまった。「独立行政法人都市再生機構」は『人が輝く都市をめざして、美しく安全で快適なまちをプロデュースします』とのこと。日本一の都市開発デベロッパーを目指されるようになった。住まいは自己責任、甲斐性がなければホームレスになるしかない。ローンで破綻したら、災害で家を失ったら、残念でしたね、頑張ってください。

 阪神大震災、東日本大震災、原子力大災害、この国で「持ち家制度」とやらの制度欠陥があまりにも無惨に崩壊してしまっている。住居は瓦礫になって消え去り、土地は使えなくなり、『住宅取得に頑張ってね。借金のお手伝いしますよ』と言われても、対応できない人は多い。「借り上げ住宅」などという弥縫策で20年やり過ごせば、何とかごまかせるという被災対策はあまりにも恥ずかしい施策。東京のような過密都市が被災した際に、「借り上げ住宅」なんて手品はできないはず。

 こんな無惨な資本主義国があるのだろうか。災害大国、地震、火山噴火、風水害、原発事故---災害のデパートのような国で、住まいの自己所有は無理な話。住まい保証は生存権の基底的な事項。生活最低条件を保証できなくて、公共は成立しない。被災地を放り出して、五輪だ国防軍だと戯言を言う前に、住まいの保証に目を向けろ。

 昨年末から、この国はいよいよ危険水域に突入したようだ。

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2013年1月 1日 (火)

今日から2013年

130101central_height 2013年になりました。何事もなく穏やかで、快晴の元旦でした。恒例の「小田原セントラルハイツ」の新年賀詞交換会に参加しました。36回目だと言うことです。1992年の年末にここへ入居し、だれ一人知る人もなかったのですが、この新年会には皆勤参加してきました。1994年4月には、住宅管理組合の理事長を仰せつかり、組合体制の整備に苦労したことを記憶しています。ここに8年4ヶ月居住して、2001年の春に城山に転居しました。思い入れのあるこのハイツとは、退去後も深くお付き合いしていますが、年々「自主管理体制」が整備充実し、施設改善も進み、現在はとても美しいマンションになっています。

 居住者の高齢化は、進んでいますが、今日の新年懇親会の席で、1977年の新築入居時に35年ローンを組んだ方々も2012年4月に完済されたとのことです。この国の持ち家制度が、勤労者層の大きな人生負担になっていること、改めて身近に感じました。

 2013年、この国も、このまち小田原もどのような道を歩んでいくのでしょうか。人びとの暮しは、若い人も、高齢者もつつがなく保たれるのでしょうか。長いデフレから、一気にインフレ突入という暴挙がまかり通るのでしょうか。不安な船出ですが、ひとつひとつ挫けずに対処し、行動していくしか無いのでしょう。いささかくたびれる一年になりそうです。

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2012年12月14日 (金)

"itplanter"試運転開始

121214itplanter キッチンテーブル横のブッフェテーブルに、着荷した野菜苗をセットして"itplanter-02"を置いてみました。養液の供給とLED照明(夜間)はオート設定です。お試し苗セットを3種、1番奥列が「ロロロッサ」中央列が「バジル」一番手前が「葉ごぼう」です。

 この栽培装置はW,D,H がそれぞれ30センチのキューブにまとめられていて、スノーホワイトのミニマルデザインです。開発者は立命館大学インキュベーション事業によるもののようで、事業所は滋賀県草津市にあります。苗は株式会社アイティプランツが供給します。かなりの種類の苗を育成しているようです。試運転がうまく行ったら「地中海風サラダコレクション」の苗を注文してみます。サラダ菜が育ってくるのは楽しいものです。

121214itplanter3  この画像は、夜間照明時の姿です。午後11時30分から午前6時30分までの7時間点灯します。かなり強いLED照明(13W)です。この近くで読書してみるのも一興かななどと考えています。

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2012年11月22日 (木)

マンションは社会的負債か?社会的資産か?

121122toshimaku_2 東京都の豊島区は、11月開催の区議会に「豊島区マンション管理推進条例」を上程するとしています。その事情をこう述べています。
 『マンションは、区民の6割以上が居住する主要な居住形態となっています。快適に住み続けるためには、建物や設備を良好に維持管理していくことが必要です。また、居住環境を快適にするだけでなく、災害時などに円滑に協力しあえる体制を作るためにも、居住者同士や地域との良好なコミュニティ形成は重要です。しかし、一つの建物を複数の方々で所有する分譲マンションは、価値観や年齢、所得の異なる所有者間での合意形成の難しさ、建物・設備の維持管理における専門性、賃貸化や利用形態の混在など、戸建住宅や1棟オーナーマンションとは異なる課題があります。マンションを良好に管理するうえで、区、管理組合、区分所有者、マンション居住者等、管理業者、宅地建物取引業者、専門家がそれぞれ取り組む事項について示すことにより、合意形成の円滑化、居住者間および地域とのコミュニティ形成・活性化を図ることで、マンションの良好な管理を推進するために、「豊島区マンション管理推進条例」を制定します』

 区内の老朽化マンションは、無管理状況となりはて汚水管の破裂などで近隣の住環境を阻害するような事態が発生し、「罰則」つきのこの条例の制定に至ったようです。マンション(区分所有共同住宅)は、都市居住としては極めて普遍的なものとなってしまいました。公営住宅を衰退させ、持ち家制度を押し進め、自治未発達の日本社会に「区分所有」という法概念の曖昧な制度を蔓延させた結果が、基礎自治体への責任転嫁となってしまったのです。
 基礎自治体、市町村(特別区も)は、住民の住生活の破綻を見過ごし、住環境の混乱を放置することはできません。小さな自治体である「マンション管理組合」の破綻に対しては、救済せざるを得なくなり、それはたいへん大きな行政負担となります。いずれ背負い込むしかない「小さな自治体」に対しては、破綻を未然に防ぐ先行した調整施策を進めることで、行政負担を軽減することができます。
 豊島区のような切羽詰まってからの、施策策定では遅すぎるのです。小田原市のようなマンション居住が5〜10%程度(あるいはもうそれを超えたか)は、まだ施策次第でマンション崩壊を防御することができます。20年前(5%時代)からマンション施策の推進を提言してきましたが、いまだマンション施策の所管課さえ定まっていない状況では、豊島区の後追いをすることになります。サスティナブルなまちを目指すとするなら、マンション施策は主要な都市経営施策となります。「マンション」は環境破壊の社会的負債にも、防災施設としての社会的資産にもなります。このまちでも早急な検討を願いたいものです。

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2012年11月14日 (水)

住まいは人権 スペインでも日本でも

121113akahata_2 今日は、党首討論やら解散やら、政治屋たちの卑猥な話題にうんざりです。明日から、寒さが厳しくなるという「天気予報」の方が、重大ニュースです。

 ニューヨークにも、石原東京都にも、橋下大阪市にも、この神奈川県にも、そしてわが小田原市にも、家を失った大勢の方たちがいます。住まいは人権、決して失ってはいけない人権です。
 今月10日、NHK BSで「スペイン危機を生きる〜住まいを求めて連帯する市民たち〜」を観ました。今週の金曜日16日の午後6時30分〜6時49分に再放送されます。
 いま、話題になっているバルセロナの市民運動のドキュメンタリーです。しなやかで、率直で、果敢な市民運動の姿が描かれています。ぜひご覧になってください。
 このような、うねりがEU労連を動かして、強い力として経済政策を変えさせるまでになってきたのです。住まいを得る権利、奪ってはいけない人権です。

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